平易な文章で哲学を語った池田晶子氏の「暮らしの哲学」(毎日新聞社)。
「14歳からの哲学」を読んで面白かったので、他の著作もということで読んでみました。
週刊誌に連載していたエッセイをまとめたものなので「14歳からの哲学」よりとっつきやすく、文章から情景が浮かぶ文章が多い。春夏秋冬、それぞれの四季について書かれた部分は特に秀逸。オススメです。
「人は、春になると変わることなく花を咲かせる桜を見たい。なぜなら、人生は、過ぎ去って還らないけれども、繰り返し巡り来る、一回的な人生と、永遠に巡る季節が交差するそこに、桜が満開の花を咲かせる。人が桜の花を見たいのは、そこに魂の永遠性、永遠の循環性をみるからだ。それは魂が故郷へ帰ることを希うような、たぶんそういう憧れに近いのだ。始まりを繰り返すことの痛みは、終わりへと向かうことへの痛みでもあるだろう。花は儚いと人は言う、自分の人生がそうであるようにと。」 (本文より)